モンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り 第1曲 神よ、わが助けに-主よわれを助けに

クラシックの歴史にはターニングポイントに立つ作曲家たちがいます。
その作曲家の登場により、流れが大きく変わったと言える者たちです。

バロック、古典派、ロマン派、現代音楽といった歴史の上で、
彼らはその変化の過渡期に立ち、次への橋渡しをしてきました。

モンテヴェルディもそうした大きな変革に関わった作曲家のひとりです。
イタリアのクレモナに彼が生まれた1567年はルネッサンスの時代。
大バッハがドイツに生まれる120年も前のことです。

当時はポリフォニーと呼ばれる多声的な音楽が主流でした。
しかしこれは歌詞を中心とした場合、どうしても訴えが散漫になります。
そうしたことへの反動としてモノディと呼ばれる歌詞の抑揚を活かし、
より直接的に独唱と伴奏で音楽を表現するという形が生まれました。
これは現代の歌やポピュラー音楽にも近いといえます。

モンテヴェルディは当初、世俗的な流行作曲家として活動していました。
マドリガーレという当時のイタリアの代表的な歌曲を得意としていました。
彼が長期に渡って作り続けたこのマドリガーレには、
ポリフォニーからモノディへと至る作風の変遷がはっきりと表れています。

「聖母マリアのタベの祈り」はこうした最中に作曲された宗教曲の大作で、
彼が世俗音楽の作曲家から宗教音楽家へと変貌を遂げた最初の作品です。
当時としては珍しく各声部にはっきりと固有の楽器が指定され、
後の時代のオーケストレーションにもつながるような劇的な効果をみせています。
またポリフォニー、モノディの両面を持ち合わせた多彩な音楽性は、
バロックにおける対位法などにも影響を与えているとみられています。

同時期に作曲された「オルフェオ」も同じような音楽的内容を持ち、
この作品が近代オペラの出発点になったとの見方もあります。
モンテヴェルディがこの時代に成し遂げた変革と残したものは、
クラシックの歴史の中でも特に重要であるとされる所以です。

「夕べの祈り-Vespers(晩課)」とは、カトリック典礼の聖務日課です。
典礼としてはミサと共に重要とされ、古くから音楽的にも重視されてきました。

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